カスタマーサクセスという言葉が注目されるようになり、コールセンターにおいてもロイヤルカスタマーを育てる顧客ロイヤルティ向上のための施策が求められるようになりました。ロイヤルカスタマーを得るメリットは、企業が安定的な売り上げを確保できるだけではありません。ロイヤルカスタマーとなった顧客本人による口コミ効果にも大いに期待できます。
カスタマーサクセスと顧客ロイヤルティの関係について学びながら、コールセンターがロイヤルカスタマー育成のために行うべき施策のポイント、具体的な事例について見ていきましょう。
カスタマーサクセスで高まる顧客ロイヤルティ
売上げに直結する顧客ロイヤルティとカスタマーサクセスとの関係性、その中で求められるコールセンターの役割について確認していきましょう。
顧客ロイヤルティとは
顧客満足度の高い顧客が、必ずしも商品を頻繁に購入するお得意様になるわけではありません。そこで、売上げに結び付く測定を行うため、商品やサービスに愛着や信頼を持ち、継続的に購入・利用してくれる状態かどうかを判断する「顧客ロイヤルティ」という考え方が生まれました。指標として主にNPS®(ネットプロモータースコア)が用いられています。この顧客ロイヤルティを向上させ、ロイヤルカスタマーを育成する役割を果たすのがカスタマーサクセスです。
顧客ロイヤルティを向上させるメリット
顧客ロイヤルティの高い顧客とは、自社商品・サービスのファンになっている状態です。信頼し愛着を持っているからこそ、SNSなどを通じて口コミという形で自ら発信、宣伝を行います。購買者の8割は口コミを気にするという統計もあり、その影響力は看過できません。当然ですが、リピート率向上や解約率低下、顧客単価増加などのメリットもあります。
【参考】口コミ効果を科学的に検証!心理学的根拠や論文、統計データを元に解説!
顧客ロイヤルティとカスタマーサクセス
商品そのものに満足していても、サポート体制の不備や購入手続きの煩雑さなどで、継続的な購入に結び付かない顧客もいます。そうした顧客を成功体験に結び付け、解約の防止や継続購入を促す手法がカスタマーサクセスです。商品やサービスの改良をはじめ、サポート体制の構築や交流サイトの立ち上げ、メールや個別対応でのアプローチなど様々な業務が考えられます。コールセンターは、直接顧客と結びつくより身近なサポーターや情報収集の窓口としての役割が求められています。
コールセンターでできるカスタマーサクセス
本来全社をあげて取り組むべき重要施策であるため、カスタマーサクセスの業務範囲は多岐にわたります。ここではコールセンターで実践できる具体的な施策について見ていきましょう。
お客様の声を共有
コールセンターは直接顧客とコミュニケーションが取れる数少ない窓口です。親身に顧客に寄り添い、課題や悩みに耳を傾け、サポートを行う過程で得られるリアルな「お客様の声」は、情報として高い価値があります。顧客が「感動」を得るポイントを全社で共有すれば、より効果的にカスタマーサクセスを実現させることが可能です。
オペレーターの力量・裁量を増やす
コールセンターに電話をかける顧客は基本的に差し迫った状態にあるため、問い合わせに直ぐに返答が得られる、対応してもらうことを望んでいます。的確な応対を行うためには、オペレーターの知識量をあげることはもちろんですが、返品対応や顧客情報の変更手続きなどオペレーターができる裁量を増やすことも重要です。オペレーター1人ひとりの技量をあげ、裁量権を与えることで、顧客を成功体験に導くアプローチを短縮することができます。
他部署との連携で商品やサービスの向上
前の記事でも触れましたが、カスタマーサクセスを成功させるためには全部署をあげた対応が必要です。顧客の声やKPIといったデータ分析などで得られた情報をコールセンター内にとどめるのではなく、関係部署に共有することで商品やサービスの改善・向上につなげることができます。さらに、改善することによって類似するお問い合わせを減らし、操作につまづく顧客を減らすことが可能です。
コールセンターにおけるカスタマーサクセス事例
コールセンターで行われているカスタマーサクセスについて具体的な事例を紹介します。
チャットサービスで初回取引を円滑に
コールセンターのアプローチは今や電話応対だけではありません。チケット売買サービス「チケットキャンプ」を運用している株式会社フンザでは、チャットサービスを通じ、「初回取引を成功させる」ための的確なサポートが行える体制作りをしています。顧客がチャットボタンをクリックすることで、それまでのページ遷移や操作履歴が細かく表示され、一目で顧客のつまづきポイントを確認することが可能です。初回取引を円滑に進めることで、利用の継続を促します。
【参考】他社事例に惑わされるな!最高のカスタマーサポートの未来を語ろう-CS JAM
FAQ検索システムで知識の共有
キリンビールを傘下に持つキリンホールディングスが運用するコールセンターでは、複数のナレッジシステムが散在し、十分な知識の共有や更新ができていない状態でした。しかし、新たにAIを搭載したFAQ検索システムを導入したことで、知識の共有が容易となり、検索する際も数クリックで目的のFAQを探し出せるようになったのです。データの整理や管理にかかる工数も大幅に削減でき、オペレーター業務が最適化されました。
【参考】コールセンターへFAQ検索システムを導入した事例や実際の効果・メリットを解説します!
システムを導入しきめ細やかな顧客管理を実現
ジュエリーなどの企画販売・輸出入を行う株式会社ヴァンドームヤマダでは「自ら作り自ら売る」ことをモットーに、顧客要望を商品の企画開発や業務改善に反映させ、日々サービス向上に取り組んでいます。その一環としてコールセンターシステムを一新し、センター内における顧客情報の共有とデータの収集・分析力の強化を行いました。その結果、顧客対応の品質があがり、サービス改善へつなげる情報の吸い上げも容易になりました。
コールセンターで顧客の心をつかむ!
顧客ロイヤルティを高めるためには、商品やサービスの品質をあげるとともに積極的な顧客アプローチが求められます。中でもコールセンターは顧客と直接コンタクトが取れる貴重なアプローチ拠点です。顧客を成功体験に導き、ロイヤルカスタマーへと育てるカスタマーサクセスは、今後のコールセンターにとっても重要な施策となります。コールセンターはカスタマーサクセスの窓口として、意見の吸い上げやサポートとして大きな役割を果たすでしょう。