最近さまざまな企業が取り入れて話題を呼んでいるマーケティング手法のひとつに、「ゲーミフィケーション」があります。ゲームの要素を使ってユーザーとコミュニケーションをとることで、企業の認知度や顧客満足度を高め、自社サービスを深く知ってもらうきっかけにもなるため、多くの企業が注目しています。ゲーミフィケーションとはいったいどんな手法なのか、具体的な事例を挙げながら解説します。
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ゲーミフィケーションとは
ゲームの要素を非ゲームの環境に取り入れる
「ゲーミフィケーション」(gamification)とは、マーケティングや組織づくりにゲームの要素を取り入れる手法のことです。日本語でわかりやすく、「ゲーム化」と呼ばれることもあります。
ゲームの要素を非ゲームの環境に取り入れることで、ユーザーやスタッフの意欲の向上を図り、ロイヤリティを強化することが目的です。
ポイントやランキング、バッジ、レベルといったゲームの要素を盛り込むことで、ユーザーの行動に新たな動機付けが生まれ、マーケティング力を高めることができます。
サービス提供者と利用者との関係を強化
ゲーミフィケーションの最もシンプルな仕組みが、イベントのスタンプラリーです。イベント会場のさまざまなポイントにスタンプを置き、参加者がそれを押しながら会場内を回ることで、ブース全体への回遊性を高めることができます。
さらに、参加者がスタンプラリーを楽しみながらブースを回ることによって、サービスを提供する企業と顧客との間にコミュニケーションが生まれます。
このようにしてゲーム以外を目的としたサービスなどにゲーム要素を取り入れて、利用者を楽しませ、サービス提供者と利用者との関係強化を図るのがゲーミフィケーションです。
マーケティングにおけるゲーミフィケーションのメリット
企業のマーケティング活動にゲーミフィケーションを取り入れることによって、製品やサービスの認知度がアップし、ユーザーとのコミュニケーションも深まるなど、さまざまなメリットが期待できます。
認知度の向上
ゲーミフィケーションをマーケティングに取り入れる大きなメリットとして、認知度の向上があります。ユーザーが継続的にゲームと関わることで、企業の製品やサービスへの理解が深まり、認知度のアップにつながります。
広告などで一方的にアピールするのと違い、ユーザーが自らゲームを楽しみながら自然と情報がインプットされるので、好印象を与えつつ認知度を高められるというWの効果があります。
コミュニケーションの向上
企業のマーケティングにゲームの要素を入れることによって、企業側からの一方的な発信ではなく、双方向の交流が生まれます。これによって、ユーザーとのコミュニケーションを深めることができ、ゲームを通じて長く続く良好な関係を築くことができます。
モチベーションのアップ
ゲームにはポイントやランキングといったさまざまな仕掛けが盛り込まれるので、たとえばスタッフの業務の効率化にゲーミフィケーションを取り入れた場合は、大きな効果を発揮します。
下記の事例「農園ゲームを導入して社員のモチベーションをアップ」を見てもわかる通り、「ポイントをゲットしたい」「ランキング上位になりたい」といったスタッフの意欲を高めることで、モチベーションをアップさせることができます。
データ収集
ゲーミフィケーションを通して、どんなユーザーが何を求めているかなど、さまざまな情報を入手することができます。ゲームによって集められたデータを収集・分析することによって、企業の今後のマーケティング活動に役立てることができます。
ゲーミフィケーションの事例
自社通販サイトにゲームを導入してキャンペーンを盛り上げる
通販サイトを舞台にして「アイテム探しゲーム」を実施し、ミッションをクリアしたユーザーに特典を付与するというゲーミフィケーションを展開した企業があります。
通販サイト「PAL CLOSET(パル クローゼット)」を運営する株式会社パルという会社で、映画「デスノート Light up the NEW world」の公開を記念したコラボキャンペーンを行いました。
サイト内のさまざまな場所に、デスノートに関する4つのアイテムを散りばめ、提示されたヒントをもとにアイテムを探すという企画です。すべてのアイテムを発見してミッションをクリアすると、ショッピングで利用できる特典がもらえるというものです。
ゲームを取り入れたキャンペーンを行うことで、サイトがエンターテイメント性を持ち、賑やか感を出すことができました。ゲーミフィケーションというと、シナリオ作りやプログラミングなどが難しいイメージもありますが、このように既存のサイトにプラスすることで、比較的容易に実施することも可能です。
「農園ゲーム」を導入して社員のモチベーションをアップ
企業の購買事務業務を見える化し、担当者のモチベーション向上と連帯感の醸成のために、ゲーミフィケーションを取り入れた事例をご紹介します。事務担当者が受け持つ作業を作物の苗になぞらえ、作業が進むごとに畑の苗が育っていくというコンセプトで、ゲームを作りました。
事務担当者は、畑の生育状況をパソコン上でいつでも見ることができます。担当者全員の畑なので、自分の担当する畑以外に、他の担当者の畑の育ち具合も見ることができます。苗を育てることでポイントが入るため、担当者同士で競い合うことで作業が速くなり、納期の順守やミスの低減にもつながるなど、担当者のスキルアップを実現できました。
皆で同じ畑を育てるという目的を持つことで、仲間同士で教え合う雰囲気づくりができ、作業の遅れにも早く気付くことができて、作業完了までの時間を6割も削減できたそうです。お互いが持っているノウハウを共有するペースも約5倍になり、ポイントランキングを設けることで競争意識が生まれ、作業を前倒しで進めていく率も2~3倍にアップしました。
【参考】ゲーミフィケーションを取り入れたオンラインマーケティング事例3選
【参考】ビジネス現場でのゲーミフィケーション活用技術と検証
今後のゲーミフィケーション
ARの拡張現実と組み合わせてブランド力を強化
さまざまな場面に取り入れられているゲーミフィケーションですが、今後はARやVRなどと組み合わせて、より楽しく魅力的な空間に発展していくことが考えられます。
ARは「Augmented Reality」の略で、仮想空間の情報やコンテンツを現実世界に重ね合わせる手法で、拡張現実とも呼ばれています。ARを利用することで、ユーザーがバーチャルに商品と触れ合うことができ、対面でショッピングをしているかのような体験ができます。
これをゲーミフィケーションと組み合わせると、どのようなことが可能になるでしょうか?たとえばインドネシアのミレニアル世代に人気の美容ブランド「Pucelle」のマーケティングに、ARとゲーミフィケーションを活用した事例があります。
ユーザーが顔のジェスチャーを使ってPucelleのアバターを操作し、障害物を避けながら街中の通りを走り、ポイントを集めるというARゲームです。このAR体験によって、PucelleのZ世代の想像力が刺激され、Pucelleブランドが一番に思い浮かべられるようになりました。
VRの仮想現実と組み合わせ、通信制高校生が学びながら交流を深める
ゲーミフィケーションはまた、VRとも非常に好相性です。VRは「Virtual Reality」の略で、バーチャルな空間をあたかも現実のように疑似体験できる仕組みのことで、仮想現実とも呼ばれています。
たとえば通信制高校のN高とS高は、VRのバーチャル空間を活用して、楽しみながら学習習慣を定着させる教材を開発しました。生徒同士が同じバーチャル空間内でプレイし、応援したりアドバイスしたりできる仕組みになっています。通信制高校の授業も、ここまでソーシャル性が高まると、通学しているのとほぼ変わらないコミュニケーションがとれるようになるでしょう。
ゲーミフィケーションがこのようにさまざまな分野で活躍することで、今まで想像できなかった商品やサービスが生まれることを、期待したいものです。
【参考】コロナ禍によって活用の幅の広がるAR、VR、そしてゲーミフィケーション
【参考】N/S高等学校、VRを用いたゲーミフィケーション教材を採用 バーチャル空間で楽しく継続的に学べる