SVになるのがこわい!
2大理由「年上ベテラン指導」と「クレーム対応」

「SV(スーパーバイザー)になってくれる人がいない」というというご相談をいただくことがよくあります。、面談でSV昇格を打診しても断れてしまうことが少なくないのです。

SVになりたくない理由として必ずと言っていいほど挙げられるのが「年上やベテランへの指導に自信がない」「クレーム対応が怖い」の2点です。

今回はSVになりたくないと感じてしまう理由と、コールセンター運営組織としてどのように対処すべきかを考えます。

「私、年上やベテランのオペレーターに注意できません!」

オペレーターはSVの苦労を見ている

SVに昇格することで、同じオペレーターという立場で仲良くしていた関係性が壊れるのではないかと不安を感じていることがあります。また、ベテランのオペレーターは、自分より知識や経験があるために、注意や指導をすることに遠慮があるのも、当然のことです。特に自分より年上のかたには、遠慮する気持ちが大きいのです。

しかし、よく話をきいてみると「年上やベテランオペレーターに指導できない」「注意しにくい」理由として、特定のオペレーターへの苦手意識が原因となっているケースが多いのです。

既存のSVが、指導の場面で苦労している様子を見ていて「自分にはできない」と感じるのです。

反発しがちなオペレーターの存在

SVの指導を聞き入れなかったり、開き直ったりするような態度をとるオペレーターがひとりでもいると、既存のSVにとっても大きなストレスになっていることは少なくありません。

新人SVにとっては恐怖となってしまうことは想像にかたくありません。SV昇格のネックになるだけでなく、日頃のオペレーションに影響を及ぼしている可能性も考えられます。

SV昇格面談で、もし特定のオペレーターの存在が語られた場合には、現状を確認したうえで、該当の人物に問題行動がある場合には、SV個人任せにはせず、組織として対応することを伝える必要があります。

個人的に相性が合わないだけということもありますので、なぜ苦手意識があるのか、じっくりと話をきいてみましょう。

レッテルを貼らずに「組織」として対応してみる

反発しがちなオペレーターは、多くのコールセンターで存在します。大切なことは「面倒くさいオペレーター」というようなマイナスなイメージの言葉で「レッテル」を貼って片づけてしまわず、組織として対応することです。

SVではなく、センター長やマネージャーが向き合って、直接意見をきく機会を作ることで、その後の関係性が改善したケースは少なくありません。SV個人に押し付けてしまわず、組織として対峙する姿勢を見せることが必要。そして、しっかりと意見に耳を傾け、いったん最後まで意見を「きき切る」機会をもつことです。

すべてに同調する必要はないのです。意見をきいて、「受け入れられること」「受け入れられないこと」を分けて整理し、本人との合意点を見つけられるよう「対話する」ことが大切です。

「個人としての価値観やこだわり」は大切ではありますが、「組織として大切にすべき価値観」とは別のものであるということを整理して伝えることが面談のポイントです。

組織対応をしっかりおこなうことで、SV昇格の不安要素を減らすことにつながるのではないでしょうか。

「私、クレームの二次対応はできません!」

顧客対応部門にクレームは必ずあるもの

SV昇格面談で「先輩SVのようなクレーム2次対応はできない」という理由も、必ずといっていいほど挙げられます。

オペレーターは、先輩SVに通話交代してもらうことで、クレームが決着する経験を持っています。「自分の対応がNG」で、「SVの対応がOK」であったから、というとらえかたになっていることがあります。

どんなに対応が素晴らしいものだったとしても、クレームになることはあるのです。顧客対応部門である以上、クレームは避けては通れないものであり、あって当然のものです。上の立場の人に通話を交代しただけで、なぜか収まるクレームも少なくありません。

SVという「ポジション」のパワー

クレーム対応に苦手意識を持つのはSVも同じです。SVになれば、場数を踏んでいくために、嫌でも鍛えられていくという違いだけなのです。

オペレーターから見ると「SVのようにはできない」と感じられるのは当然のことですが、「立場が人を作る」という言葉があるように、SVというポジションに立ったら、場数だけではなく「腹が据わる」とでもいうような「気持ちの変化」が訪れるものです。

クレームでSVに通話交代したら収まることがあるのも、SVというポジションを通して発出される強みのひとつです。SVという「ポジションパワー」は、SVになって初めてわかるものなのかもしれません。

新人SV研修で、先輩SVの体験談などを、SV候補のオペレーターさんに伝えるカリキュラムがあるコールセンターもあります。ロールモデルとなるSVの体験談が、SV昇格の場面で、オペレーターの背中を押すことにつながるかもしれません。

SVになるメリットは見えにくい

いつ見ても忙しそう

企業によって仕事の内容や権限にはかなりの差があるものの、「忙しい」というのがコールセンターSVに共通するキーワードです。SVのパソコンには、オペレーターが使用しているCRM画面、コール管理関連のシステム、FAQ、作成中の報告書、シフト管理表など、さまざまな画面が大量に並んでいることが普通です。

業務量が多い上に「待ったなし」の対応を求められるSVの大変さは、オペレーター席から見ていてもよくわかるものです。このままオペレーターでいるほうが気楽だと感じるのは無理もありません。

時給100円アップで責任も100倍

SVに昇格したとしても、大幅な時給アップが望めないという現実もSVになりたくない理由のひとつです。多くの仕事を抱えているのに、給与も自分とあまり変わらないのなら、「給与の割に仕事が大変」「割に合わない」と感じるでしょう。将来のキャリアアップを望まない層にとっては、魅力が感じられない可能性もありますね。

一時的な「つなぎのキャリア」としてオペレーターという仕事を選んでいるかたや、すでに年齢を重ねてきており、現状を維持したいという考えかたもあります。そのような働きかたを求める層によって、コールセンターの雇用が維持されているという側面もあるのです。

SVはビジネススキルが身につく魅力ある仕事

幅広いビジネススキルが身につく

コールセンターSVはさまざまなビジネススキルが身につく仕事です。PCスキルはもちろんのこと、AIなど最新のテクノロジーを使いこなす仕事でもあり、デジタルスキルは必然的に高くなります。

オペレーターで対応しきれなかったヘビークレームに対応することも多く、交渉力や営業力が磨かれるだけでなく、逃げずに矢面に立つ機会が多く、メンタルも強くなければ務まりません。同時に複数のクレームを抱えることも珍しくありません。問題解決の優先順位を考えつつ、常に判断力を鍛えられる仕事でもあります。

ビジネスパーソンとして成長できる

一般企業では、課長クラス以上になって初めて本格的な「部下育成」「人材育成」の役割を求められることが一般的です。しかしコールセンターSVは、たとえアルバイトの立場であっても、オペレーターの育成の役割が求められます。単に知識を教えるだけでなく、オペレーターのモチベーション管理まで行う仕事です。

採用の面接に携わっているSVも少なくありません。採用後の新人研修や、着台後のフォローも重要な役割。また、オペレーターが退職しないよう、小さな変化をキャッチして声をかけるなど、人材育成のスキルも身につきます。

このように、幅広いビジネススキルが磨かれ、成長できるのがコールセンターSVの仕事です。SV昇格のチャンスを逃さず、成長の機会ととらえて挑戦してもらいたいものです。

まとめ

今回は、SV昇格のネックとなる2大理由「年上ベテラン指導」「クレーム対応」を中心に、SV昇格したくないというオペレーターの気持ちについてご紹介しました。

SV昇格面談を行う立場のかたが、SVになる事で得られるさまざまなビジネススキルや、仕事の魅力について語って聞かせられるよう、SVの職務要件を言語化し、準備しておくことが必要かも知れません。


この記事を書いた人

ギグワークスクロスアイティ編集部