インターネットやスマートフォンが普及し、オンラインでの情報収集が一般的になりました。商品やサービスの下調べ、口コミの確認、申し込みもオンラインで行われることが増え、企業から顧客へのアプローチ手段も、主体であった電話やEメールから、ウェビナーやポッドキャスト、アプリ組込み型のメッセージング、SNSなど広がりを見せています。
しかし、こうしたツールをテックタッチ支援に活かしていくためには、顧客体験を整理しそれに基づいたアプローチを設定していくことが重要です。カスタマーサクセスを実現するテックタッチ支援の基本的な進め方を確認するとともに、各種ツールを利用した具体的なアプローチ方法を紹介します。
テックタッチ支援の進め方
1対多数向けのアプローチ手段として注目されているテックタッチ支援を進めることで、全体のサービス品質を高めることが可能です。テックタッチ支援の具体的な進め方を確認していきましょう。
①顧客体験の整理
見込み顧客が実際の顧客となるまでには様々な過程が存在します。サービス利用の流れで見ていくなら、顧客自身の要望認識に始まり、サービスの検索・検討・トライアルを経て、ようやく正式なサービス利用が始まるのです。こうした一連の流れに顧客感情を加味しながら作られたフロー図をカスタマージャーニーマップと言い、これがテックタッチを行う上で重要な役割を果たします。と言うのも、テックタッチはそれぞれの段階で先んじてサポートを行うことを目的としており、顧客動向がわかることでタイミング良く適切なアプローチができるからです。そのため、テックタッチ支援を進める際は、一番最初にカスタマージャーニーマップで顧客体験を整理することが求められます。
②自動化するべき内容を見極める
顧客体験の整理で得られた情報を基に、それぞれの場面で打つべき施策を検討します。施策には、顧客とのやり取りに人の手が必要なハイタッチやロータッチ、自動で行うテックタッチがあるため、状況に応じて変えることが必要です。自動化することで労力やコストを大幅に削減し、安定したサービス品質を保つことができますが、全ての過程に自動化が適しているとは限りません。実際の顧客の反応や他のタッチに置き換えた場合の変化など、テストを繰り返し検証し続けることが大切です。
③低コスト低難度のツールを導入してみる
現在は多くのサービスでトライアルを実施していたり、無料で始められるプラットフォームもあるため、まずはいろいろ試してみるといいでしょう。基本的なテックタッチ支援であるマニュアルやチュートリアルなどの作成ツールや、サイトへのメッセージ埋め込みなど様々なツールが提供されています。実際にツールを利用してテックタッチを行うことで、向き不向きなど見えてくる課題もあります。CRMシステムやマーケティングプラットフォームは最低限押さえておきたいツールですが、導入するツールが増えるほど管理の負担が増えるため注意しましょう。
④定期的に見直しをする
全てのアプローチ手段に言えることですが、テックタッチにも定期的な見直しが必要です。顧客にとって「わかりにくい」「見にくい」「使いにくい」など解約の原因になる部分がないか常に確認し、気持ちよくサービスを利用できるよう改善していきます。もちろん実際の顧客の声を拾いながらサービスへ反映させたり、施策がうまく機能していない場合の検証なども必要です。
テックタッチの実例
今までは、テックタッチのアプローチと言えばメルマガと呼ばれるEメールが主流でした。しかし今は、1対多数向けのアプローチとして、ウェビナーやポッドキャスト、アプリ組込み型のメッセージング、SNSなど様々な手段が選べます。実例を交えながらそれぞれのアプローチについて見ていきましょう。
ウェビナー
「WEB」と「セミナー」を組み合わせて作られた言葉が「ウェビナー」です。オンラインセミナーと呼ばれることもありますが、会場不要で参加者の居住地も選ばないため、幅広い顧客層へのアプローチが可能です。開催するにはZoomなどのWEBツールが必要ですが、近年はツールをインストールしなくても、リンクにアクセスするだけで参加できるサービスも利用できます。ウェビナーのほうが会場開催よりも集客できたり、顧客情報やアンケートなどのマーケティング情報が取りやすいなど様々なメリットがあります。
【参考】【ウェビナー事例のご紹介】事例を参考にウェビナーを成功させましょう
ポッドキャスト
ポッドキャストとは、アイ”ポッド”と放送を意味するブロード”キャスト”を組み合わせた造語で、音声に特化したコンテンツを指します。ラジオと異なりリアルタイムの配信ではない分、ダウンロードして好きな時に再生したり、必要な部分だけ聞くことが可能です。海外ではごく一般的に活用されており、近年日本でも RECRUITやECC、メルカリ、アドビ、講談社など多種多様な業界でポッドキャストが発信されています。内容は、著名人による対談や商品開発秘話、ゆるく語る社内情報など幅広く、まさに音声版オウンドメディアと言えるでしょう。
【参考】企業のポッドキャストが増加中!?音声のオウンドメディア事例57選
アプリ組込み型のメッセージング
自社アプリ開発が一般化し、様々な業態の企業がアプリを通じて情報発信をするようになりました。自社アプリをインストールしてもらえれば、Eメールのように他のメルマガに埋もれてしまうこともありません。また、カスタマージャーニーマップに合わせたメッセージをあらかじめ設定することでタイミングよくアプローチすることが可能ですし、顧客の購買履歴に合わせたサービスや商品の広告が載せられます。
SNS
現在はブラウザからのWEB検索ではなく、 InstagramやPinterest、Facebook、LINEなどのSNSアプリを利用して検索する人も増えています。口コミによる広告は古くから行われており、SNSは口コミ要素の強い広告手段です。アプローチ手段に自社の顧客層が良く使用するSNSアプリを選ぶことで、より効果的な訴求ができます。また、「Kao」の事例のように顧客を巻き込んだ形で体験や試供品などのキャンペーンを行える点も魅力です。
【参考】「使ってみたい」気持ちを作り出す。シェアを拡大させたSNSプロモーションとは|花王株式会社様 事例
テックタッチ支援でサービス向上を
テックタッチ支援の方法は幅広いため、何から手を付けて良いかわからず難しく感じる人も多いでしょう。何もない状態から構築する場合は、まずは小さな項目から自動化や改善を図り、対応の手間やコストを抑え、問い合わせを減らしていくことが大切です。また、基本的なテックタッチ支援であるマニュアルやチュートリアル、FAQの整備はもちろん押さえる必要がありますが、さらに一歩進んだウェビナーやポッドキャストなどによるアプローチ方法も進めていきたいところです。テックタッチ支援によるカスタマーサクセスへの効果は見逃せません。ノウハウを自社で集めて始める、専門的な部分は外部に委託するなど、実際の進め方も含め、積極的に新しいアプローチ手段を検討しチャレンジしていきましょう。