ブロックチェーン技術の発達とWeb3.0時代の到来で、私たちの暮らしにも変化の兆しが感じられるようになりました。それは学生の就職活動においても例外ではなく、最新技術を用いた企業へのエントリーや学歴証明、自身のキャリア形成など様々な場面で変化が始まっています。就活生と企業はこうした変化を見逃すことなく、積極的に対応していくことが必要です。Web3.0がもたらす新しい可能性について理解を深めつつ、NFTを利用した就職活動や新しい働き方「DAO」について見ていきましょう。
Web3.0がもたらす新しい可能性
インターネット技術の進歩に伴い、一方通行であった Web1.0から相互交流が可能なWeb2.0へと時代が推移しました。ここでは次に到来するとされる分散型インターネット「Web3.0」について見ていきましょう。
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Web3.0とは?
Web3.0は次世代の非中央集権型インターネットを指す言葉です。様々な情報をAmazonやGoogleなどの大企業が独占している現状への危機感から、私たちの個人情報を私たち自身で保有し管理していくことを目的としています。個人情報を大企業に預けることなくサービスが利用できるようになるため、プライバシーの強化やセキュリティの向上などが期待されています。また分散型のシステムであるため、障害やアクセス集中によるシステムダウンが起きにくくなります。
Web3.0を支える技術
Web3.0の実現のために欠かせない技術がブロックチェーンです。仮想通貨を実現するために考案されたブロックチェーンは、非中央集権でありながら情報の信頼性を高められるように工夫されています。そしてブロックチェーン上での契約や取引を自動化できるスマートコントラクトによって、管理者が仲介しない形のサービスを作ることができるようになりました。
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Web3.0を利用したサービス
Web3.0を利用したサービスとして、分散型金融(DeFi)やNFTが挙げられます。電子データを「所有」することを可能にするNFT技術は、特にクリエイティブやエンターテイメントの分野で注目されています。ブロックチェーンを基盤とした仮想通貨によって、ゲームで遊んでお金を稼ぐ「Play to Earn(P2E)」という働き方も実現できるようになりました。また、個人情報の改竄や流出を防ぐことができるという利点から、リクルート市場でも活用が進められています。
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STARプロジェクトとは?ブロックチェーンで作る次世代の履歴書
「STAR」は、慶應義塾大学が主体となったプロジェクトの一つで「Secure Transmission And Recording」の略称です。現在はブロックチェーン技術を活用し、学生の個人情報を守りながら学生の活動履歴を企業に提示することができる「Web3.0時代の就活サイト」として活用されています。
【参考】STARとは|個人情報を守り公正な評価を通じて大学生活をより充実した経験に
STARプロジェクトの目的
STARは求人広告企業によって収集されている「学生の個人情報を、学生自身の手に戻す」ことを主眼として発足したプロジェクトです。ブロックチェーンを活用したプラットフォームを提供することで、学生の個人情報を守りつつ、企業と円滑な交流を進め、学生と企業の採用マッチングの精度を上げることが最終的な目的です。個人情報の流出を防ぐため、学生が許可した企業のみ期間限定で情報を閲覧できるようになっています。
STARプロジェクトでできること
学生はこのプラットフォームを介すことで、企業への情報開示が自分の手で行なえるようになります。また、「学習履歴」に記録される情報は、全教科の成績平均や授業参加履歴、個人的な活動を登録したポートフォリオなど多岐にわたり、エントリーシートの作成に利用できるのはもちろんのこと、自身のキャリアの証明として生涯の財産にすることが可能です。
さらに、STARコインと呼ばれる仮想通貨を利用した様々な学びコンテンツの受講、企業が開催するイベントへの参加、AIによる適性検査など、学生の就活を後押しする多種多様なサービスが利用できます。
学歴証明書をNFTで発行!信頼性と利便性を向上させる大学の取り組み
学歴証明書とは、本人が卒業した教育機関から発行される卒業証明書や修了証などを指します。これまでは紙面で交付されるのが一般的でしたが、最新テクノロジーを活用することによって、より便利で信頼性の高い学歴証明が実現しつつあります。従来の学歴証明書の課題と、NFTを活用した学歴証明の取り組みについて見ていきましょう。
紙面による学歴証明の課題
紙やカードによる証明書の発行には膨大な管理の手間やコストが必要です。また紛失や盗難、偽造の恐れもあり、特に偽造は経歴詐称によるトラブルにも発展しかねないため、発行者側は偽造防止の対策が求められます。
千葉工業大学のNFTによる学歴証明の試み
千葉工業大学では2023年の卒業生からNFTによる学位証明書の発行が可能となりました。大学としては国内初の試みです。同校のNFT学位証明書は、ブロックチェーン上で一般公開される「NFT学位証明書」と名前や学位などの個人情報を証明する「VC証書」という2つの技術を組み合わせて作成されています。NFTによる管理に移行することで、学生は発行元となる教育機関に依存することなくオンライン上で学位を証明することが可能です。学歴の証明を簡単に行えるというメリットに加えて、国際規格に準拠しているため海外での就職活動にも活用することができます。
Web3.0時代の新しい働き方!DAOで実現できること
Web3.0の認知が進んだことで、DAOと呼ばれる組織体や新しい働き方について耳にする機会も増えたのではないでしょうか。DAOは年齢や立場にとらわれず、自分自身のアイデアやスキルを活かして仕事ができる環境として注目を集めています。ここではDAOの概要と、DAOで働く上で役に立つサービスについて紹介します。
DAOとは
「DAO( Decentralized Autonomous Organization )」とは、特定の管理者や所有者が存在せず、自律的に事業やプロジェクトを推進できる組織を指します。プロジェクトの参加者たちが共同運営する形となり、組織内の決議も参加者たちの投票によって行われるため、一人ひとりの意見が反映されることが期待できます。DAOはブロックチェーンを基盤として構築されるため、Web3.0の浸透とともにDAOが改めて注目されるようになりました。
DAOと従来組織の違い
従来組織では運用に関して最終的な決定権を持つのは特定の所有者や管理者です。一般企業であれば株主や役員、マネージャーが組織運営における意思決定を行い、その他の一般社員が運営に直接関わることはありません。また情報の公開は限定的です。一方DAOは、運営に関する意思決定は参加者全員による投票で決議され、活動内容は全て公開されます。投票による集計やサービスの提供、契約の履行はスマートコントラクトによって自動的に実行されるため、特定の管理者が介入することはありません。
Yours DAO
DAOの立ち上げはインターネット環境さえあれば誰でも比較的簡単に行なうことが可能です。しかし、参入障壁が低くなったことで多種多様なDAOが生まれ、その中から自身にマッチするDAOを探すのが困難になりました。「Yours DAO」では、コミュニティのメンバーが世界中のDAOの情報を収集し、DAOと働き手がより良い形でマッチングする手助けを行なっています。
変わる就活と新しい働き方
これまで、就職活動といえば大手就活サイトへ情報を登録し、履歴書を持って様々な企業を訪問する形が一般的でした。しかし、こうした企業側の主導で進められる就職活動の仕組みを変えていこう、という動きが近年では活発です。メタバースやリモートワークの浸透と、DAOやPlay to Earn(P2E)といった新しい働き方の登場によって、ワークライフバランスの取り方や、キャリア形成の方法がより多様になりつつあります。学生を送り出す大学側も、STARプロジェクトやNFT学歴証明書といった取り組みで学生の支援を開始しています。世界的にデジタル人材の需要が高まり、優秀な人材の確保が課題となっている現在、就職活動に関わる新しい技術やサービスに注視し知識をアップデートしていくことが大切です。